従来の応用化学系の学科は、化学工学科、合成化学科、電気化学科、高分子工学科など、 その目的に応じて構成されています。これらの学科が、方法論や生成物などを学科構成の 指標としているのに対し、物質電子化学専攻では化学の基本的な原点から広汎な応用への 道の一本化という点にその視点をおいています。お互いに関連ある学問分野を理解し、そ れらの学際領域にある多くの問題を解くためには、個別的な目的意識では不十分であると いうのがその基本的な認識です。つまり、化学反応は電子の移動過程であるという観点に 立って、化学反応に伴う各元素の電子状態の変化、化学構造における電子の役割などに注 目し、得られた結果を単に現象論的に整理するのではなく、化学反応の機構、関与する物 質の構造や反応性などの相互関連性に対する正しい理解から化学的な現象を統一的に解明 しようとするものです。このため、旧来の理学と工学には壁はなく、両者を横割的に結合 し、基礎(理学)から応用(工学)までの一貫した知識と経験を学生に与えることを目的 としています。このような教育理念のもとで学生は従来よりもさらに広い視野と創造性を もつ研究者や技術者として育成されている点に本専攻の特色があります。また、学部を持 たない大学院である大学院総合理工学研究科の一専攻として、「開かれた大学院」として 本学のみならず、全国の大学から広い分野の学科出身の学生を受け入れており、将来を担 うことのできる研究者及び技術者の育成に努めています。同時に、基礎から応用までの学 際的研究を推進しています。
本専攻では、ここに学ぶ学生がいわゆる純正化学の分野は勿論のこと、金属、無機材料、 有機合成、石油、高分子、繊維、あるいは電子材料や生物化学、薬化学などの工業化学の 分野において将来十分な活躍が期待できるカリキュラムがあります。さらにナノテクノロ ジーやグリーンケミストリー、燃料電池、太陽電池などのエネルギー変換、情報システム 機能素子の開発など、今日急速に発展しつつある課題に対して、未来性に富んだ新しい発 想と手法を提供することができる創造的な能力を育成することを心がけています。
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