Researches 研究内容


新しいつくり方で挑む新しい高分子材料

当研究室では、有機化学/有機金属化学を基盤として、新しい概念につながり得る重合手法の開拓や新しい高分子材料の創製に関する研究を展開しております。 例えば、アレン誘導体のリビング重合の開発と機能性高分子合成への応用、 主鎖にメタラサイクル構造を有する有機金属高分子の合成と新しいタイプの主鎖型反応性高分子としての応用、 遷移金属触媒による多成分系重縮合法の開拓などについて現在精力的に研究を進めております。


研究キーワード

高分子合成,有機合成,有機金属化学,有機金属ポリマー,反応性高分子,高分子反応,機能性高分子,π共役高分子,リビング重合,ミクロスフェア,ナノスフェア,重縮合,触媒反応


高不飽和化合物であるアレン類やブタジエン類をモノマーとした新しい高分子合成法の開拓とその応用に関する研究を行っています。


アレン類の配位重合挙動

アリルニッケル触媒によるアレン類の配位重合を開拓し、その詳細な重合挙動を明らかにしています:

  1. 本重合はリビング機構で進行し、単分散性のポリマーを与えます
  2. モノマー上の置換基の電子的な性質にあまり影響を受けないため、多彩な置換基を有するアレン類の一般性の高い重合手法として活用できます
  3. 得られるポリマーのミクロ構造を広い範囲(x:y=90:10~0:100)で精密に制御可能であり、反応性や性質を精密に制御しつつ新規の反応性高分子が構築できます
  4. 本重合系に用いるアリルニッケル触媒はブタジエンやイソシアニドの重合触媒でもあることから、アレン類と様々なモノマーの共重合体が合成可能です
現在、本重合法を用いる反応性高分子および新規機能性材料への展開も行っています。



精密高分子材料の構築

広範な官能基耐性を活かした機能性材料

広範な官能基を有するモノマーのリビング重合が可能である点を活かし、様々な精密高分子材料の構築を行っています。
例えば、シランカップラー骨格をもつアレンを組み込んだブロック共重合体を合成し、無機材料の表面修飾が可能であることを見い出しています。 これらを用いて、新規の固相有機合成の反応場の構築などに関する応用研究を展開しています。



らせん高分子の合成

置換基に不斉点を導入したアレン類の重合では主鎖に一方向のらせん構造を有するポリマーが得られることを明らかにしています。 ここで得られるポリマーには、らせんキラリティーに起因する新規な機能の発現が期待でき、 光学分割カラムなどの不斉認識場や反応場などとしての展開が期待できます。



機能性ミクロスフィア/ナノスフィアの創製

本手法は不均一系でもリビング機構で重合が進行することから、ポリマー微粒子の合成についても検討中であり、 比較的粒子径のそろったミクロスフィア,ナノスフィアの構築が可能であることを明らかにしています。 リビング重合であることを活かした従来にはない新規機能性材料への応用に期待がもてます。


従来の有機化合物にはない多様な反応性を示す遷移金属-炭素結合に着目し、主鎖にメタラサイクル構造を有する新規有機金属ポリマーの合成を行い、 新しい主鎖型反応性高分子としての応用展開を行っています。 すなわち、上記の有機金属ポリマーと種々の低分子試薬との高分子反応によって、既存の手法では合成の困難な主鎖骨格をもつ機能性材料を合成する手法を展開中です。




例えば、チタン錯体と芳香族ジイン類との重合により、主鎖の結合が2,5-位で規制されたチタナシクロペンタジエン骨格を含む有機チタンポリマーを合成でき、 このポリマーと種々の親電子試薬との高分子反応によってさまざまなヘテロ元素(スズ、リン、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル等)が π電子系に直接付与された構造のπ共役高分子が得られることを明らかにしています。




有機チタンポリマーの高分子反応によって得られるπ共役高分子はヘテロ元素の種類に応じて全く異なる性質を示します。




π共役高分子中のヘテロ元素をさらに別の元素で化学修飾し、「元素ブロック」を構築することで、 単一の元素では達成できなかったより興味深い光・電子的性質をもつポリマーが得られることを明らかにしています。


遷移金属触媒による3成分カップリング反応等の素反応を開拓し、様々な多成分系重縮合法への展開を推進中です。 多成分カップリング反応では3つ以上の成分が一段階で秩序正しく連結することから、 比較的単純な構造のモノマーから多彩な構造の高分子を合成でき、また高度な一次構造を秩序正しく付与した高分子骨格を簡便に構築できます。 さらに、これらの反応に基づいた機能性材料の合成研究も展開しています。


プレカーサーポリマーを経由した共役系ポリマーの合成

π共役高分子は、導電性材料,ポリマーバッテリー,トランジスター,有機EL材料,非線形光学材料など様々な分野へ応用が期待されていますが、主鎖骨格の剛直さから有機溶媒に溶けにくく、成形加工しにくい欠点を有しています。 このため有機溶媒に溶ける前駆体(プレカーサーポリマー)を合成し加工・成型し、その後加熱処理などにより目的とするπ共役材料を構築する手法が有力視されています。 多成分重縮合反応では、簡単なモノマーからプレカーサーポリマーを容易に合成することができます。


ポリ(アリーレン-ビニレン)誘導体の合成

芳香族ビスアレン,芳香族ジハロゲン化物と種々の構造を持つ求核剤の3成分重縮合を開拓し、これを用いてポリマー鎖や機能性部位を側鎖にグラフトしたポリ(アリーレン-ビニレン)を一段階で合成する手法を開発しています。 例えば、イオン伝導性や主鎖への一方向らせん構造の誘発を目指し、ポリオキシエチレン鎖や光学活性基を有する求核剤を用いた重合をそれぞれ検討し、 それら機能性部位を側鎖に有するポリマーが比較的容易に構築できることを明らかにしています。


多種多様な主鎖骨格を持つ機能性ポリマーの合成

近年、遷移金属触媒による多成分カップリング反応が多数報告されており、それらを素反応として用いて(あるいは新たに開発しつつ)様々な機能性ポリマーの合成法を開拓しています。